ゴルフクラブ試打日記。          

キャディさんのおかげ

キャディさん

今日は、いつもと内容を変えまして、私たちゴルファーにとって、とても頼もしい存在であるキャディさんについて書かせていただきたいと思います。
ラウンド中、ゴルファーは『周知の事実』以外、誰からもアドバイスを受けることはできませんが、キャディさんだけは例外で、いろいろなアドバイスを求められます。
まさにゴルファーにとって、唯一の味方といえる存在です。
ゴルフクラブを持ってきてくれるだけの存在ではありません。
残り距離や風向き・グリーンの傾斜や芝目まで、実に細かなところまで教えてくれます。
最近ゴルフを始められたという方は、ひょっとしたらセルフプレーしか経験されていないかもしれません。
それくらい、今はセルフプレーが一般的になりましたが、私がゴルフを始めた頃はキャディさん付きのプレーが当たり前でした。
キャディさん
私はこれまで、たくさんのキャディさんにお世話になってきました。
キャディさんのおかげで楽しく、そしていい内容のプレーをすることができました。
特に初めてプレーするコースでは、キャディさんがいらっしゃる時とそうでない時では、プレーの内容も、スコアも大きく影響してきます。
キャディさんからのコースについてのアドバイスはとてもありがたいです。
今はほとんどのゴルフ場がホームページを持っていますし、そのページからコースレイアウトや攻略法などを知ることができます。
しかしインターネットが普及するまでは、そういったことができなかったので、事前に調べることができませんでした。
なので、キャディさんの存在はとてもありがたいです。
昔、初めてのコースで競技に出場したとき、パー3のホールで、10メートル以上の距離のパッティングが残り、私はいつも通り普通に打とうとしたのですが、テークバックを開始したときにキャディさんがふと、
「見た目よりも上っているから気をつけて。」
とアドバイスしてくれました。
私はテークバックの途中だったのですが、「えっ、そうなんだ・・・。」と思い、インパクトが強くなり(いわゆるパンチが入った状態になり)、ボールは打つ前にイメージしたスピードよりも速いスピードでカップに向かっていきました。
すると、ボールはそのままジャストタッチでカップに沈み、私は嬉しいバーディを獲ることができました。
もし、キャディさんのアドバイスが無かったら、かなりショートしていたのは間違いありません。
それ以外にも、特にティショットの時ですが、ボールの行方をよく目で追ってくれ、どの方向に飛んで、どの場所にあるかまで把握していただけると、とてもありがたいです。
そうでないと、ロストボールになることもあります。
キャディさん
人によって様々だと思いますが、私がキャディさんに求めるものは2つだけです。
ひとつはセカンドショット以降、グリーンまでの残り距離を正確に教えてくれること。
そして、もうひとつがボールの行方をしっかりと把握してくれることです。
この2つだけでいいです。
後は自分でやります。
使いたいクラブも自分で持ってきますし、グリーン上にあるボールも自分で拭きます。
私は昔から、力任せにクラブを強く振るタイプなので、出球が速くなる傾向があるのですが、キャディさんによっては、ボールが速すぎて見えなかった・・・。と言われたこともよくありました。
そういったときはとても苦戦します。
お願いだから、どうかボールだけはしっかりと目で追っていて・・・。と思うのですが、こればかりは仕方ありません。
特に逆光のときはボールが見えにくくなります。
こういったことが続くと、昔からの私の悪い癖であるヘッドアップが出てしまうこともありますし、コースでは怖くてドライバーを使えなくなり、スプーンなどでティショットすることもありました。
ホームコースであれば、だいたいどのあたりまで飛んでいったかが把握できるのですが、初めてのコースではそれが難しいこともあります。
普通のキャディさん以外にも、『フォアキャディさん』がいらっしゃるコースだと、さらにありがたさが増します。
私はこれまで、フォアキャディさんにもたくさん救われてきました。
フォアキャディさんがいなかったら、確実にロストボールになっていただろうな・・・。ということもよくありました。
ミスショット
今でも下手ですが、私はビギナー時代から数え切れないほどたくさんの大きなミスショットをしてきました。
クラブを力一杯振り、コントロールという概念をもたなかったので、とにかくボールは大きく曲がりました。
左右に曲がり、全くコントロールできませんでした。
まさに『行き先はボールに聞いてくれ』状態でした。
以前も書きましたが、私ほどOBやロストボールを打ったゴルファーは世界中探してもいないと思います。
数え切れないほどたくさんのボールを無くしてしまいました。
私の下手自慢をしても誰にも褒められませんが、事実なので仕方ありません。
キャディさん フォアー
いつもキャディさんには迷惑をかけっぱなしでした。
今でこそ、プライベートでも競技でも使用するボールはタイトリストのPRO V1xと決めていますが、ビギナーの頃はとにかくボールがよく曲がって無くなってしまうことも多く、ニューボールを使うのがもったいないので、量販店やホームセンターなどで『一袋いくら』で売られているロストボールを使っていました。
だいたい、20~30球くらいは、いつも持って行っていたように思います。
競技ではワンボールルールが適用されますが、仲間たちとのプライベートラウンドだったので、いろいろな種類のボールを使っていました。
汚れているのはもちろん、傷がついているボールも平気でした。
ボールの綺麗さや性能よりも、コストパフォーマンスを優先していました。
キャディさん
ゴルフは下手でも、とにかくゴルフが楽しくて仕方なかったので、友人たちとほぼ毎週のように自宅近くのゴルフ場でプレーしていました。
毎週のように通い、下手だけど思いっきり振る・・・。ということで、コースの方(特にキャディさん)にも顔と名前を覚えていただけるようになっていったのだと思います。
私がラウンドするときは、だいたいキャディさんが2~3人くらいで『固定』のように決まっていました。
みなさん、とても優しい方たちでした。
前が混んでいて待たされるようなときは春先だと、コース脇に芽を出しているツクシやワラビなどを摘むこともあり、キャディさんにとって趣味と実益を兼ねていました。
とてものどかな時代だったのだと思います。
夏は冷たい麦茶やはちみつレモンを作ってきていただき、ご馳走になることもありましたし、寒さが厳しい冬は、温かいほうじ茶をご馳走になることもありました。
待たされているときも何かしていて、常に私たちのプレーを後押ししてくださいました。
OBエリア
先ほども書きましたが、私はとにかくボールがよく曲がったので、キャディさんには大変ご迷惑をかけてしまいました。
私がボールを曲げる度に、キャディさんが私のボールを探してくださいました。
確実にOBだし、深いところにいっているので、私は
「キャディさん、いいですよ。次のボールを使いますから・・・。」といっても聞き入れてくれません。
ふと脇を見ると、『マムシ注意』の看板が立っていることもあります。
「キャディさん、マムシがいるかもしれないから、これ以上行かないで早く戻ってきてください。」といっても、
「大丈夫、長靴を履いているから。もしマムシがいたらマムシ酒にするから・・・。」といって茂みの奥へ入っていきました。
そして、私のボールを見つけ出してくださり、いつも『おまけ』のボールが付いていました。
私が無くしたのは一球だけなのですが、近くにあるロストボールまで見つけてくれ、私にプレゼントしてくださいました。
18ホールを終えて、最初にもってきていたよりも、数が増えていたこともよくありました。
キャディさん
最初の頃は、とてもありがたいな・・・。と思っていたのですが、私にボールを手渡してくださるキャディさんの汗まみれの顔を見て、これではいけない・・・。と思うようになりました。
自分のせいで、かかなくてもいい汗をかかせてしまい、もしマムシに噛まれてしまったら取り返しの付かないことになる・・・。と思いました。
キャディさんは私が球を曲げても、面倒くさがることもなく、いつも笑顔で対応してくださったのですが、その笑顔といっぱいの汗を見て、私に罪の意識が芽生え、このままではいけない、何とかしなければ・・・。という思いが日に日に強くなっていきました。
私がミスばかりするから、キャディさんはいつも深い茂みまでいかなければならないのですが、18ホール全てフェアウェイを歩かせてあげたいな・・・。と思いました。
そうするにはどうすればいいんだろう・・・?と、無い知恵を絞りました。
最初は曲げないようにとにかく真っ直ぐ飛ばそう・・・。という発想をもったのですが、当時はパーシモンからメタルへと変わっていく時代でした。
今のラージサイズのチタンドライバーならば、その発想もいけたのかもしれませんが、当時は全く曲げずに真っ直ぐ飛ばすというのは現実的ではありませんでした。
たまに真っ直ぐ曲がらずに飛ぶことがありましたが、それは私の中では『偶然』に過ぎませんでした。
それを『必然』にするのはどうしたらいいのだろう・・・。と思いましたが、『真っ直ぐ』という発想では答えが見いだせませんでした。
そこで、曲げずに真っ直ぐ飛ばすのではなく、左右どちらかに『曲がる方向を一定』させようと思いました。
フェードボールとドローボールの、どちらが自分にとって『自然』なのか?ということを練習場で確認する日が続きました。
その頃はニック・ファルド選手に憧れていましたし、フェードボールを打ちたいと思っていたので、フェードボールヒッターを目指そうとしたのですが、自分にはマッチしていない感じで、なかなか上手くいきませんでした。
そして、もう一人のトッププレイヤーであり、当時ニック・ファルド選手とソニーランキング1位を争っていた、グレッグ・ノーマン選手のドローボールを目指してみようと思いました。
書店に置いてあった、グレッグ・ノーマン選手のレッスンビデオを購入し、毎日観ました。
私にはこちらのほうが合っていたようで、自然とドロー系が身につき、今に至っています。
今でもフェードボールを打ちたいと練習していますが、私にはドローのほうが自然だということがわかりました。
練習場でもそうですし、コースでもドロー系のほうが、イメージが出しやすいので私に合っています。
後は曲がり幅をコントロールして、フェアウェイを外さないようにし、最低でもファーストカットで収まるようにしようと考えるようになりました。(もちろん、実際は思うようにいかないことも多いのですが・・・。)
キャディさんはいつも嫌な顔一つせず笑顔で対応してくださり、私に技術的なアドバイスなどもなさらなかったのですが、それが一番の教えでした。
キャディさんにコース脇の茂みではなく、フェアウェイをずっと歩いていて欲しい・・・。という思いが、技術を磨かせてくれたような気がします。
そのときにセルフプレーだったら、今の技術を習得するのが、もっと遅れていたのは間違いありません。
人間は自分の為だと、どうしてもサボってしまうこともあるし、手を抜きたくなることもありますが、人の為だと頑張ることができるのだということを知ることができました。
今となっては、自分の持ち球(球筋)を磨いていくことが、結果的にレベルアップにつながったような気がします。
キャディさん
ほぼ毎週のようにラウンドをご一緒していただき、
「上手くなったね。もうボールを探す必要がなくなったね・・・。」
と言われ、気がつけば18ホールをボール一球でプレーできるようになるまで成長していました。
スコアが爆発的に良くなっていました。
それから、自分にはどのボールが合っているのかを探すようになりました。
糸巻きの時代はロイヤルマックスフライを使っていましたし、ツーピースボールが流行りだして、ブリヂストンのボールを使う時期が長く続きました。
アーニー・エルス選手の大活躍により、タイトリストのPRO V1が品薄状態になるほどの大人気となり、私も使い始めましたが、今は姉妹モデルのV1xを愛用しています。
今でもゴルフをエンジョイできているのは、キャディさんのおかげです。
私は楽しい仲間たちにも恵まれていますが、キャディさんにも恵まれている幸せなゴルファーです。
バンカー&グリーン
もう他界しましたが、私の父はゴルフが大嫌いでした。
世界一のエンジョイゴルファーである私と、ゴルフ嫌いの父は意見が合いませんでした。
TVでトーナメント中継を観ていると、プレイヤーとキャディさんが一緒に歩いているシーンで、
「何でゴルファーは自分が使う道具を自分で運ばずに、人に運ばせているんだ?打つときだけ使って、あとはまた人に運ばせるのか?まさに金持ちの道楽だな。こんなのはスポーツじゃない。」
と言っていました。
ゴルフが嫌いな人にはそう見えるのかもしれません。
確かに、プレイヤーとキャディさんの18ホールを終えての消費カロリーを考えてみると、圧倒的にキャディさんのほうが多いような気がします。
そして、グリーン上でプレイヤーとキャディさんがラインについて相談しているシーンを見て、
「プロなのに自分の打ち方を決められないのか?いちいち人に聞くのか?他に、このような競技はないぞ・・・。」
とも言っていました。
私はプロキャディという職業があって、ツアーではキャディを帯同させないといけないという規定があるので、みんなそうしていると説明したのですが、聞く耳を持ちませんでした。
父にゴルフというスポーツを理解してもらうことはできませんでしたが、確かに父のいう通り、キャディさん無しのセルフプレーで行う試合があってもいいのかもしれません。
いつもアンダーパーで回っている選手たちが、オーバーパー続出ということもあり得るのではないでしょうか?
それくらいゴルファーにとって、キャディさんは重要な存在です。
キャディさん
私は世界一のエンジョイゴルファーで、できることなら、毎日でもゴルフ場か練習場に居たいと思っています。
しかし、キャディさんという仕事は難しすぎてできません。
ゴルフ場の空気を毎日吸うことができるのはとても魅力的ですが、キャディさんという仕事は私には無理です。
体力には自信があるので、カートを使わずにバッグを運ぶだけなら楽勝ですが・・・。
キャディさん
キャディさんはコースのことを熟知しているだけでなく、いつも笑顔でプレイヤーの気分を良くしていく能力が求められます。
私がミスショットを連発しても落ち込むことなくプレーを楽しむことができたのは、素晴らしいキャディさんたちのおかげです。
セルフプレーにも慣れていますが、キャディさんがいらっしゃると助かります。
キャディさん
ホームコースでもそうですし、初めて行く県外のコースなどでも、素晴らしいキャディさんたちに出会うことができました。
コース専属のキャディさんはもちろん、プロを目指す研修生の方に付いていただいたこともたくさんあります。
キャディさん
どの職種でもそうですが、今はキャディさんも人材不足のようで、私の自宅近くのゴルフ場は常にキャディさんを募集しています。
今はセルフプレーが多いですが、そのゴルフ場は名門ということで、キャディさん付きのプレーが当たり前になっているのだと思います。
セルフプレーが当たり前となっている今、キャディさん付きのプレーを経験したことがない方もいらっしゃると思いますが、キャディさんから教わることはとても多いので、機会があれば経験していただきたいと思っています。
キャディさん
ゴルフクラブ試打日記は、ゴルフクラブについての記事がメインなのに、どうして今回はキャディさんについて書かせていただいたのかといいますと、私が昔からお世話になっていたキャディさんが3月いっぱいで勇退されるからです。
なので、感謝の思いを込めて書かせていただきました。
年齢は少し重ねられましたが今もお元気ですし、まだまだ現役を続行できるのですが、後輩たちに道を譲ることにしたのだそうです。
私のボールをいつも探してくださった方です。
ゴルフが大好きで、ゴルファーが楽しそうにプレーしているのを見るのが何よりも好きだったのだそうです。
私はずっとお世話になりましたし、とても寂しいですが、何とか恩返しをしたいと考えています。
ゴルファー同士もそうですが、ゴルファーとキャディさんという人間同士の関係はとても大切だな・・・。と思いました。
素晴らしい人たちにたくさん出会えてきた私は、本当に幸せなゴルファーです。